経営におけるロジスティクスの位置づけ
1企業経営とロジスティクス管理
21世紀に入ってからの企業経営を取り巻く環境の変化は著しい。市場の不透明化、流行変化は2000年ごろからのICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)の急速な進展に伴い、ますます加速している。携帯電話、インターネットによる比較サイト、SNSなどによる口コミにより、商品の売れ行きは急激に変化するようになっている。
また、その頃からの急速なごろーばりゼーションの進展は、世界中からの原材料・部品の調達、海外生産、世界各国への販売の急増という形でサプライチェーンを複雑にしている。すでに上場組み立て型製造業の海外売上高比率は5割を超えている。近年では食品・日雑メーカーの海外進出も急速に拡大している。この影響は単なる輸出入増加にとどまらない。海外企業との競争という中で、企業はより高い資本効率、売上高伸長率を求められることとなっている。
加えて、リスク管理の必要性も増している。東日本大震災では、東日本の向上が罹災したことにより、世界の名だたるメーカーの工場が部品や部材を調達できずに生産をストップすることとなった。
これらの変化は、ロジスティクス管理にどのような影響を及ぼしているのであろうか。コスト低減はもはや不可欠である。国際物流の知識の重要性が増していることは言うまでもない。また、変化がICTにより起こったのであるから、ICTの活用も考えなければならない。
なによりロジスティクス管理にとって最も重要となってきているのは、在庫コントロールである。急激な市場の変化がグローバルで起きているということは、国内調達・生産・販売と比較して長いリードタイムの中での在庫コントロールが、需要予測精度向上や輸送リードタイム短縮プロセス、工場立地、委託先の生産キャパシティやちっちなど、開発部門の領域である部品・部材の兵十化や製品設計、営業部門の領域である販売計画策定とその管理といった分野にまで踏み込んで、市場へのモノの過不足のない供給を実現していくことが求められるようになってきているのである。
2企業価値とロジスティクス施策
国際間での企業競争、その中におけるロジスティクスの重要性増大という観点から、ロジスティクスへは企業価値向上に直結する活動を行うことが求められている。企業価値の向上を企業の収益性の向上と、事業の成長性の総合力として考えると、経営目標とロジスティクス施策との関係は次のとおりである。
- 売上の増加と収益性向上
売上の増加と収益性の向上のためのロジスティクス活動は、顧客満足度をいかに得るかが重要である。このためには顧客サービスの向上、在庫アベイラビリティの向上、市場変動への対応、市場占有率の向上を目指す必要がある。 - コスト低減
コストの低減は、いうまでもなくロジスティクスに関わる全てのコスト低減である。部分的でなく、製造原価や物流コストを含むサプライチェーン全体における効率化とコスト低減が要求される。 - 資産の活用・効率化
一方、資産の活用・効率化で最も重要なのは、棚卸資産(原材料・仕掛・製品)の削減である。また、ロジスティクスに供される固定資産(土地・建物・機械設備)の削減のために、工場、物流センター、物流設備などの縮減及び効果的活用を図る必要がある。 - 事業の成長性・永続性
企業の長期的な繁栄のためには、売り上げ増加と収益性向上のみとらわれてはならない。コストがかかっても、企業の成長性・永続性のために必要なことがある。それらは、企業ブランド力や、社会的責任(CSR)と言われるものである。ロジスティクスにおける安全・安心、物流品質、環境対応、コンプライアンス、BCPは、直接企業価値を左右する重要な課題であり、戦略的な取り組みが必要とされる。
これら4つの観点でのロジスティクス施策が、企業価値の向上に寄与していることは明らかである。